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"望郷の道"を行く vol.3

望郷の道 ③タイトル.jpg


◆一言一句、逃すまい

 北方謙三さんのあるエッセイに森林道.jpg
「情報だけのビジネス書を読むことを、僕は読書とは思わない。
これは勉強だ。読書とは、想像力を刺激する行為だ。
読む人次第で、本の価値は変わる」と書かれていました。

私は北方先生に叱られてしまいそうですが、
まるで勉強をするように『望郷の道』を読み始めました
(もちろんビジネス書ではありませんが!)。

右手には蛍光ペン、左手にはポストイットを握りしめ、
まるで受験生が参考書を読むがごとく。

とにかく「富士町に関するキーワードを一言一句、見逃すまい!」という勢いです。
『望郷の道』の最初の舞台は北九州の遠賀川。家業の水運業を手伝う小添正太が登場します。
すかさず私は「小添(おぞえ)」の文字にマーカーを引きました。
(この名字は、富士町の小副川の地名と関係があるかもしれないぞ)

次は13ページ目。舞台が佐賀に変わり、藤瑠瑋(ふじるい)が出てくると、「藤」にマーク。
(名字の「藤」は富士町の「富士」が由来かも!)

さらに14ページ。
「家の稼業を、瑠瑋は継いだ。唐津、七山、古場にある、三つの賭場である」という文章にもマークです。

それからも続々と、富士町に関わるキーワードが出てきて、私の『望郷の道』はあっという間に
ポストイットと蛍光マークだらけになってしまいました。

◆作家の深い愛情と愛着

藤家に婿入りした正太は古場(こば)の賭場を取り仕切り、桜.jpg
古湯(ふるゆ)に別荘をもち、小副川(おそえがわ)に
新しい賭場を開きます。

やがて正太は台湾に渡り、菓子業をおこして成功しますが、
「古湯の湯につかりたかなぁ」とたえず
望郷の念にかられるのです。

私は勉強のように小説を読み始めましたが、
ドラマチックな物語にぐいぐい引き込まれ、
何度涙したことでしょう。

私の知らない富士町の歴史を教えてくれ、佐賀人の美徳ともいうべき勤勉さと家族の絆を
つぶさに描いてくださった北方先生に、感謝の気持ちでいっぱいになりました。

私は読み終えて、感動の余韻のなかで、改めて上下2冊の『望郷の道』を手にとりました。
そして表紙を見つめ、はっとしました。上巻の表紙は「桜」。

古湯を貫く嘉瀬川沿いの桜の風景に似ています。そして下巻の表紙は「杉」。
藤正太が古場岳に植えた杉であり、富士町の町木である杉です。

あぁ、北方先生は富士町への深い深い愛情と愛着をもって、この作品を書き上げられたのだ。
私は手にとった2冊の本の重みをひしひしと感じたのでした。

(文・富士館司書 江口裕子)

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